〒018-5141 秋田県鹿角市八幡平字熊沢国有林

金勢さまのある子宝の秘湯

古くから八幡平の湯治場として知られていたが、昭和48年に土砂崩れで倒壊し、今は少し離れた場所に木造の建物で営業を続けている。すべて木造りにこだわっているのは「ふけの湯ファン」への愛情だろうか…。
館内の木の浴室には何時も入浴客の絶え間がない。溢れる乳白色の硫黄泉は如何にも山のいで湯らしい安らぎだ。この温泉は子宝の湯として宣伝され、子宝をさずかった湯治客が奉納した「金勢さま」が廊下の一隅に祭られている。
玄関横の小道を少し歩いていくと無雑作に作った露天風呂がある。とにかく湯量が多い。また、マイナスイオンの含有量は日本最大といわれている。見上げる一帯は八幡平の樹海で、ブナやダケカンバ、アオモリトドマツの緑のまっただなかの一浴は爽快そのものである。この付近の標高は1100㍍という。
八幡平頂上からふけの湯に下る登山コースも安易なので、温泉と登山を兼ねた年配のお客も多い。

単純温泉（低張性弱酸性高温泉） 泉温89.0℃と高温泉、ｐH3.2 と弱酸性泉でも強い方。
陽イオンは水素が40％で酸性を形成している。
陰イオンは硫酸イオンが94％でほとんどを占める。塩素は５％程度で少ない
この温泉の特徴は硫酸性の酸性泉である。酸性泉のため殺菌効果があるのでアトピーなどや尋常性乾癬などの皮膚病に効果あると思われる。酸性泉といっても強くなく、単純温泉ではあるが、温和というより中等度の刺激温泉ととらえてよいと思われる。肌の敏感な人は出浴時に真水などで洗い流したほうがよいかもしれない。長期連浴で皮膚炎が生じる可能性は捨てきれない。

単純硫黄泉（硫化水素型）（低張性弱酸性高温泉） 泉温86.2℃と高温泉、ｐH4.6 と中等度の弱酸性泉
陽イオンは水素は記載はない、あとはナトリウム・カルシウム・マグネシウムがある。
陰イオンは硫酸イオンが76％でほとんどを占める。塩素イオンは18％程度で次になる
チオ硫酸イオン1.4㎎/kgとやや硫黄泉系遊離硫化水素5.5㎎とやや高い。
この温泉の特徴は硫化水素臭（卵の腐ったような臭い）の硫化水素型の硫黄泉である。蒸留残差物も0.05g/㎏と非常に少なく、まさに硫化水素型の単純温泉である。硫化水素型のため血管拡張効果がややみられ、拡張した血管の中を湯の熱が早く運ばれるため、早期に温まりやすい温泉と思われる。出浴後はほとんどが硫化水素の血管拡張効果による体温上昇であるので、体についた水滴が気化するときに熱が奪われ、塩類泉より早く体温が低下する。夏はサッパリとするが、気温の低い冬は早めに衣服をまとって保温する必要がある。末梢血管を広げる効果があるので、末梢循環障害の冷え性などの効果があるとおもわれる。
やや酸性泉であるがｐH4.6程度では殺菌などの効果は乏しくアトピーなどには効果は不十分かもしれない。この温泉も酸性泉といっても強くなく、単純温泉ではあるが、温和というより中等度の刺激温泉ととらえてよいと思われる。こちらは、酸ではなくイオウで肌の敏感な人は皮膚炎を生じるため、肌の敏感な人は出浴時に真水などで洗い流したほうがよいかもしれない。岩の湯同様に長期連浴で皮膚炎が生じる可能性は捨てきれない。

日本温泉科学会会長、日本温泉協会副会長（学術部委員長）、国際医療福祉大学大学院　教授 前田眞治