〒329-2922 栃木県那須塩原市湯本塩原37

こざっぱりした日本調

奥塩原そのものが秘湯的な存在の温泉場である。温泉場のバックに見える斜面は、昔硫黄を採取した鉱山の跡である。言うまでもなくここの温泉は昔で言う硫黄泉である。如何にも効き目のあるような湯の味は、なるほど天然の温泉だといいたいほどの温泉らしいお湯である。
最近整備された裏庭の散歩道を歩いてゆくと人気の共同湯「むじなの湯」「寺の湯」と、にごり湯めぐりが楽しめる。
他の宿の、湯治客相手のような造りと比べて、渓雲閣はじつにこざっぱりした純日本調の作りである。下のごちゃごちゃした古町かいわいと比較すると、ここに宿を選んだ人は通人なんだなあーと、思うほど都会人に喜ばれている宿である。それに料理や接遇も、山の宿らしくて、上品なのがうれしい。
この新湯を走る日塩もみじラインは、日光・鬼怒川方面へのドライブコースで、歴史ある紅葉の名所である。又、硫黄山から大沼公園への自然研究路は、原生林を探勝しながらの手軽な登山コースとなっている。

単純酸性硫黄泉（硫化水素型）（低張性酸性高温泉） この温泉の特徴はｐH2.9という強い硫酸酸性の源泉温73.4℃の高温泉である。強い酸は皮膚表面にある細菌を殺菌し皮膚を消毒できる温泉である。皮膚表面の細菌が悪影響を及ぼすアトピー性皮膚炎や乾癬などに効果をもたらすと考えられる。荒れた皮膚に細菌の炎症が加わりその症状を悪化させるが、それが軽減され、本来の健常な皮膚の増生が細菌の悪影響がない状態で再生することで、皮膚を健常化する。しかし、強い酸なので、肌の弱い人は出浴時に真水や水道水で洗い流すことをお勧めする。さらにもう一つの特徴ある泉質は硫化水素が非常に多いということである。硫化水素は毒性の強い気体なので換気を十分にした中で入浴する必要がある。また硫化水素は血管拡張物質なので入浴直後から血管が拡張され温泉の熱が拡張されて血管から多くの血液に伝わり体温上昇が早い特徴があり、急激な体温上昇をもたらす。そのため温熱効果は強いのも特徴であるが、塩類泉ではないので保温効果は乏しく、出浴後早めに服を着て保温されるとよいと思われる。これは逆に出浴後の放熱作用があり、夏の暑いときの入浴ではさっぱりとした温泉として感じられると思われる。

日本温泉科学会会長、日本温泉協会副会長（学術部委員長）、国際医療福祉大学大学院　教授 前田眞治

山々の展望が見える全室南向きの落ち着いた和室です。トイレ（ウォシュレット）付き